「-ing」の正体を暴く──なぜ動名詞と進行形は同じ形になったのか?

英語の歴史を遡ると動名詞(Gerund)と現在分詞(Present Participle / 進行形の元)は全く異なる語源と語尾を持っていました。

今回はこれらがどのようにして一つに合流していったのかについて話します。

マツくん

えっ?昔は形が違ったの?

目次

古英語(5世紀~11世紀):別々の顔

古英語(Old English)の時代、両者は形も機能もはっきりと区別されていました。

項目 動名詞 (Gerund) 現在分詞 (Present Participle)
語尾 -ung / -ing -ende
性格 完全に「名詞」 「形容詞」に近い
役割 抽象的な行為そのものを表す 状態や付帯状況を表す
leornung
(学習 / 学ぶこと)
leornende
(学んでいる状態の)

この頃は、動名詞(-ung / -ing)は「純粋な名詞」でした。

そのため、動詞のような「目的語を直接取る力」を持っていませんでした。

当時の動名詞は1語で使われることが多かったそうです。

1語で使われる: Running is good.(走ることは良い)

目的語が必要な場合: 「名詞 + of + 名詞」という形をとる。

※現代の learning English(英語を学ぶこと)という形は、当時は文法違反でした。
the learning of English(英語学習)と表記しました。

一方、現在分詞の(-ende)は形容詞として使われていました。

「私は走っている」という進行形の形(be動詞 + -ende)はまだ一般的ではなく、単に現在形で「私は走る」と言うのが普通でした。

番長先生

この古い -ende はドイツ語などの親戚の言語に、今も名残があります。

ドイツ語: singend(歌っている)
オランダ語:zingend(歌っている)

ドイツ語の singend(ズィンゲント)は英語の -ingとは使い勝手が大きく異なります。

ます。ドイツ語には英語のような “be -ing”という進行形が存在しません。

(例) Ich singe.「私は歌う。私は歌っている」

2. 形容詞や「〜しながら」として使う

-end(現在分詞)は主に以下の2つのパターンで使われます。

・形容詞として名詞を修飾する。
→ das singende Kind(その歌っている子供)

・ 副詞的に「〜しながら」という付帯状況を表す。
→ Er kam singend nach Hause.(彼は歌いながら家に帰ってきた)

ドイツ語の -end はあくまで「性質」や「おまけの動作」を表す形容詞的な使われ方をしています。

中期英語(12世紀〜15世紀):形の混同と合流

この時期に、大きな音の変化と文法の変化が起こります。

① 音の変化(発音の弱まり)

言葉の末尾の発音が弱くなる傾向の中で、現在分詞の -ende が変化し始めます。

南部方言などで -ende → -inde → -inge と変化しました。

これにより、元々名詞だった -ing と音がそっくりになってしまったのです。

② 文法的な融合

形が似てくると、使い方も混ざり合います。

動名詞の動詞化: 元々「名詞」だった動名詞が、目的語を取ったり副詞で修飾されたりといった「動詞的」な性質を持ち始めます。

進行形の誕生: 「He was on hunting(彼は狩りの最中だ)」という、前置詞 + 動名詞の形から on が脱落し、「He was hunting」という進行形に近い形が定着していきました。

近代英語以降:-ingへの統一

15世紀から16世紀にかけて、現在分詞の -ende はほぼ消失し、完全に -ing に取って代わられました。

なぜ統一されたのか?

 主な理由は「音の混同」ですが、動名詞が「動作」を表し、現在分詞も「動作の進行」を表すという、意味の近さがこの融合を加速させたと見られています。

現在では、私たちは文脈によってこれらを使い分けていますが、文法学的には「動詞的名詞」と「現在分詞」の境界線が曖昧なケースもあり、これらをまとめて -ing形(-ing form) と呼ぶことも多いです。

まとめ

今回の内容を振り返ります。

時代 動名詞 (Gerund) 現在分詞 (Participle) 主な特徴
古英語
(~11世紀)
-ung / -ing
純粋な「名詞」
-ende
「形容詞」に近い
形も機能も完全に別物。
中英語
(12~15世紀)
-ing -inde / -inge 音の変化で形が似てくる。
動名詞が動詞の性質を持ち始める。
近代英語
(16世紀~)
すべて -ing に統一 進行形が確立。
分詞構文や意味上の主語が多様化。

現代英語において、動名詞と現在分詞が同じ形をしているのは、歴史の荒波に揉まれて形が削られ、たまたま同じ場所に辿り着いたからです。

かつての -ung や -ende を使い分けていた先祖たちが今の英語を見たら、「なんてズボラな言語になったんだ!」と驚くかもしれません。 でも、そのシンプルさのおかげで、私たちは -ing というたった一つの武器で、世界と繋がることができています。

「形はシンプルに、意味は深く。」

これこそが、長い歴史を経て英語が手に入れた、最強の進化なのかもしれませんね。

マツくん

昔の英語じゃなくてよかったぁ〜!

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